ひとつとして同じ青はない、海原に輝く青い光。
青のレイヤー。
それは、過去から現在に至るまで連綿と重ねられてきた逞しくも慎ましい暮らしを。
青のグラデーション。
それは、ここに生きる人たちの喜怒哀楽に満ちた豊かな表情を。
波間に弾ける光。
それは、未来へと繋がる瑞々しい感性を。
光と青い色彩が織りなす美しさを「人として生きる」ことのメタファーとしながら、私はよく、自宅から勝浦朝市への道中にある部原(へばら)の海を眺めた。
「朝市の同じ場所に今、何十人目として立っている場の重みがある」
「資本主義経済の『かなり端っこの方』だからこそ感じられる魅力がある」
「若いうちからやらせられるような環境がねぇと歴史は続いていかねぇよ」
「朝市があってのこの町だし、朝市あってのうちなんじゃないかなと思います」
「人としての原点に晒される日常こそが、何もない町のかけがえのない魅力」
2021年4月から勝浦朝市に出店を始めて以来、朝市とともに歩んできた人たちの重みと奥行きのある深い言葉が、打ち寄せる波のように重ねられてきた。
「非日常」の眼差しを持った旅人たちが、430年続いてきた「日常の先っぽ」に触れる。そこで「原始的な人の活動」に何かを感じ取ることで、徐々に勝浦という土地は観光先のチェックポイントから、また足を運びたい大切な場所へと変化してゆく。その旅路の果てにあるのが「人として生きる」ことの根源的な豊かさであるに違いない。
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勝浦市は千葉県南東部、房総半島の太平洋側に位置する。県民流に説明すれば、千葉県のマスコットキャラクター「チーバくん」のお尻の辺りにある港町…ということになるだろう。
2026年3月末の時点で1万4666人と、関東地方で最も人口の少ない市である勝浦が近年、にわかに注目を浴び始めるようになったきっかけが、夏の「猛暑」である。観測史上一度も35度以上の猛暑日を記録したことがなく、真夏日も他の地域に比較して少ないことから、東京至近の避暑地としてメディアがこぞって取り上げるようになったのだ。勝浦のこの夏の涼しさは、海風と海面水温との関係が要因ではないかとも云われている。
涼やかな青い海はまた、食の恵みをもたらしてくれる。銚子に次ぐ県内第二の水揚げ量を誇る勝浦には高知県など各地から「黒潮の道」を航行してカツオやマグロ漁船が入港して来る。また、沿岸漁業ではキンメ漁が盛んだが、勝浦は率先して水資源管理を行ってきた歴史がある。
そして、港の近くで水曜日以外の毎日催される朝市が、飛騨の高山、能登の輪島とともに日本三大朝市として挙げられる「勝浦朝市」である。天正19年(1591年)からの歴史を有し、近隣各地から老若男女に外国人も、様々な人々が出店者として暮らしに欠かせない食やモノを携えて集う。その光景はこの土地の民俗や風土を体現していると云えるだろう。旬が通りを彩り、人の生き生きとした営みが目の前で繰り広げられる。朝市は名実ともに勝浦の文化拠点となっている。
朝市の出店者は観光客からよく、ご当地グルメの勝浦タンタンメンがおいしい店はどこかと尋ねられるし、逆に出店者が前のめりに勝浦のおすすめの場所を教えてあげることもしばしばだ。
編集室のリヤカー屋台にも観光客がよく立ち寄ってくれるが、その手にスパイスコーヒーのカップを握っているお客さんの多いこと。「焙煎所でこの本の著者が出店してると聞いて」との嬉しい言葉に、「どうぞこちらにコーヒーを置いて本を見てってください」とスペースを空けてあげる。こんな何気ないやりとりも楽しいものだ。そんなご近所付き合いをさせていただいているスパイスコーヒーも、市内の空き店舗をカフェや焙煎所に生まれ変わらせるなど、新しい文化拠点として旅の目的地となっている。
雑誌『こんにちば』第2号では、そんな「新旧の文化拠点」を軸に、勝浦の旅を楽しんでみたい。430年続く朝市でいつものように「おはよう」の挨拶を交わし、モーニングコーヒーの香りからこれからの生き方を感じ取る。そういう原点回帰の旅が、この青い風景の中にある。
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■ Contents|目次
01 special
KATSUURA 勝浦 旅は文化拠点から始まる。
04 Prologue プロローグ
14 cultural hub 1
SPAiCE COFFEE
|Coffee stand & Roastery & Shop
Interview
SPAiCE COFFEE 代表 紺野雄平さん
28 cultural hub 2
勝浦朝市|Morning Market
Interview かつうら朝市の会 会長 江澤修さん
秋葉梨園|Pear
鶴屋海産|Dried bonito fakes
朝いちらーめんのむふぅ|Ramen
興津のゆうちゃん|Oden
竹工房 せいみや|Bamboo crafts
佃煮近江|Tsukudani
加美(佐藤さん)
|Vegetables & Prepared food & Japanese pickles
勝浦養蜂園|Honey
六佐どん(塩田さん)|Greengrocer
37→46 & 63→72
Delicious Restaurant & Cafe Guide
割烹 中むら|Kappo
イタリア食堂 TOKUBEI|Italian restaurant
だいにんぐ 清|Okinawa-Soba
とき々堂 Tokidokido|Cafe & Gallery
50 BLUE SCENERY
60 干物と朝市と
Dried fish shop at Katsuura morning market.
74 Epilogue エピローグ
Interview 割烹中むら 中村佳之さん
88 book & essay
北の喫茶室から 喫茶と読書 ひとつぶ|松戸市
91 book & essay
南の海町から 保田文庫& 0470-|保田/千倉
94 essay
田んぼの記録 草so|鴨川市
96 The narrative of the cafe #2
mado|我孫子市
2026年4月27日発行
1980円(本体1800円+税)
発行|暮ラシカルデザイン編集室
編集発行人|沼尻亙司
本文108p+表まわり(オールカラー)
A4版変形
スクラム製本・ゴム紐綴じ
※編集室が裁断・折り加工を手掛けた独自製本です